世界とつながる読書:『仕事に効く教養としての「世界史」』出口治明

世界史ほどイヤなものは無かった.一生、世界史と離れて過ごしたかった.そう思っていた.この本と出会うまでは.目から鱗が落ちる、という本に久しぶりに出会った. 高校の社会科で、まごうこと無く「地理」を選んだ理系の僕は、世界史や日本史を選択するヤ…

黒板への愛着.

ここ数日、たくさんの新聞社の取材を受けて、黒板が好きな自分で良かったとしんみり感じた.湯川秀樹の愛用した黒板が、私の阪大に設置されたとのニュース公開のことである.畳6畳分にもなろうかという巨大な黒板を使い始めて、もう何年にもなる.4年前、…

たこ焼きの半径の上限と、カブトムシについて.

大阪では、日曜日の昼はたこ焼きと決まっている.我が家のたこ焼き機は、たて4×よこ6=24個を同時に焼くことの出来る優れものだったはずなのだが(先月たこ焼きプレートを新調した)、よこ6列のうち、端の2列は電熱の加減が弱く、上手く焼けないという…

南部コロキウム.

南部陽一郎先生の息吹を感じながら進む講演.次々に学部生や教員から浴びせかけられる質問に、汗をかきながら答えてくれる講師たち.「おお、ええ質問するなぁ」「うわーそれ聞きたかったことやん」「なるほど、そういう視点で今の話聞いてたんやね」そんな…

アインシュタインと世界線を交錯させてみた.

スイスの首都ベルン.11月は既に凍えるほど寒く、世界遺産に指定されているという美しい旧市街をのんびりぶらぶらする訳にもいかない.分厚いコートを着て急ぎ足で行き交う人がほとんどである.きっとアインシュタインもそんな風にこの街を歩いていたかも…

科学者を展示する(続報):日本科学未来館に黒板。

ついに科学未来館に、足下まである巨大黒板が設置された.2013年11月9日、10日と開催された「サイエンスアゴラ2013」で、理研のブースとして「理論物理の研究現場をのぞいてみよう」というイベントが開催された.科学未来館の目玉アート、「ジオコスモス」(…

美と素粒子論.

物理の雑誌「パリティ」の編集委員を務めてもう3年目になるが、ついに念願の企画が世に出た.2013年10月号、特集「美と素粒子論」.大変嬉しい. これは素粒子理論屋としてもかなり個人的な感覚になるが、美しい理論というものがあるとずっと思って来…

人生は解析接続.

大栗さんに呼んでいただいて、Caltechに一週間滞在している.毎日楽しく議論させてもらって、とても嬉しい.思えば、初めてCaltechに呼んでいただいたのは、ここから車で2時間ほどの場所にある、カリフォルニア大学サンタバーバラ校でポスドクを始めた時だっ…

科学者を展示する.

2013年4月20日、いよいよその「実験」を世に試す時がやって来た.理研の一般公開.理論物理学研究者そのものを展示する、という試みである.展示中.「うぉーすげぇ、わけ分からん数式書いて英語でしゃべってる」「ひょえー、なにこれ」「科学者って必殺ワザ…

と或る科学とデザインの夜.

昨夜は、そんなことを知らない人たちの前でしゃべってしまっている自分に自分で驚いてしまう夜だった.twitterで知り合ったある方との交流は、渋谷WOWでのトークイベントに発展した.HITSPAPERの主催するトークイベント「と或る科学とデザインの夜」で、自ら…

阪大.

10月1日に阪大に着任した.理研はしばらく兼務させていただく.こんなに長期間、研究をすっぽかしたのは初めてだ.9月の末に引っ越してからそろそろ一ヶ月になる.大阪への引っ越し、阪大着任、講義や会議、その合間に理研の研究室運営と研究員会議代表…

科学は芸術.

科学のアウトリーチの王道は、もちろん、最先端の科学を分かり易く伝えることである.そのことは、理研の一般公開や、様々な一般講演で良ーく身に染みて理解してきたつもりだ.しかし、ちょっと違うんやないか、と思う面がある.科学というのはそもそも芸術…

イギリスの重い雲の下で.

朝日が照らすイギリス東部の田園風景の中を、高速鉄道がロンドン、King's Cross駅に向けて疾走している.まずいパニーニをほおばり、まずいコーヒーをすすりながら、幸せな時間である.イギリス滞在は六日間だった.ケンブリッジ大学のニュートン研究所と、…

物性物理と超弦理論.

物理学会の年会が終わり、ほっと一息ついている帰路の新幹線の車内である.学会では、午前と午後のセッションをそれぞれ1セッションとすると素粒子論領域で7セッションあったのだが、素粒子論の部屋に座ったのは結局そのうち3セッションだけだった.残り…

数理連携10の根本問題の発掘.

こんなタイトルの研究会を年末に主催した.本当のところを言うと、成功するとは思っていなかった.オーガナイザーがそんなんゆうたらほんまあかんけど、でも、実のところ、うまくいかないと思っていた. ところが.この研究会のなんと楽しかったことか.ほん…

ベトナム.

ビーチに打ち寄せる波の音を聞きながら、ゆっくりと30年前の論文を読んでいる.こんなのはサンタバーバラでポスドクをしていたとき以来なんちゃうやろか. ここはベトナムのQui Nhonという街で、日本から一日半かけてやって来た.Elastic and Diffractive …

ヒッグス粒子の探索:神と握手、なるか?

スカイライナーが、朝日が昇る前の東京から滑るように逃げて行く.昨夜はヒグス(ヒッグスっていうのが世間ではスタンダードかな)のCERNセミナをweb中継で観た.データの最終図を見ると、秋からさらにぐぐっと線が下に押しやられ、まさに除外領域がどんどん…

生死と素粒子論.

弘前の学会.素粒子論懇談会が終わった夜、飲みに出たら、居酒屋に素粒子論屋が集結していた.いろんなグループがたまたま、というか、狭い街に大量の素粒子論屋がやってきて学会をしているもんやから、必然的に、飲み屋が素粒子論屋で埋まるという恐ろしい…

高校生のまなざし.

会場に入ると、目を輝かせた高校生が立っていた.あっという間に、自分が高校生だった頃の毎日の楽しさがよみがえってきた.いや、高校生だった頃やないな、大学生やろか.会場の高校生達の科学的レベルは、既に大学生のそれに達していると言っても良かった…

重い中性子星.

再び、いやもう何回目だろう、韓国のAPCTPに来ている.三泊四日だの旅だが、えらく勉強になった.知りたかったことを一気に学べた.それもきっと、オーガナイザーの方々が議論中心の研究会にしてくださったからだろう.研究会は"From dense matter to conpac…

仁科センターBBQ.

研究者の顔が、一人の親の顔に戻る.笑顔のひととき. 理研仁科センターのBBQは、毎年、理研キャンパスの隣りにある諏訪神社の花火大会に合わせて開催される、大規模行事だ.200人ほどの、センターに関係する人たちが一同に会し、花火をみながらビールを…

ふー、サイエンスライブショー「ユニバース」にゲスト出演.

あらら、お父さんお母さん、口開けて寝てるやん. 科学技術館のサイエンスライブショー「ユニバース」に、ゲスト科学者として出演してきた.10分ほどの時間で、研究している内容などを聴衆に説明するコーナー.聴衆には、なんと1歳の赤ちゃんからおじいさ…

パリの森での議論。

パリの宇宙物理学研究所の講堂は、驚くほど古めかしい感じだった。昔の基研の大講義室を思い出す。いや、椅子の感じや天井の高さなど、それよりも古い感じがする。本当はいかほどに古いかは、ついに現地の人に尋ねる機会を逸してしまった。それもそのはず、…

パリの空の下で.

体調が優れないまま成田から発ち、パリの街に降り立った.外国出張するときにはいつも、心が興奮状態になるものだが、今回は違って、少し沈んでいた.いや、沈んでいたというより、なんと言うか、ホッとしていた.なんでホッとしているんやろ、と機内で振り…

超固体。

「超」がつくものは凄いに決まっている.理研のプレスリリースをtwitterで知ったのは、もう一ヶ月ほど前になる.そこには「超固体」の文字が踊っていた.理研の河野低温物理研究室.「超固体は存在する」 で、早速河野さんにセミナーをお願いしたところ、快…

反物質チョコ?本日、理研一般公開。

「はしもとせんせーい、反物質チョコ食べてくださーい!」の声に、娘と駆け寄ってみると、なんとそこには、は、は、反物質チョコが!!しかもいろんな種類があるではないか.おそるおそる手を伸ばしてみた.反物質なら手を触れたら手が消滅してしまうことも…

新たな思いで.

地震からもうすぐ一ヶ月が過ぎようとしている.原発事故の問題は、まだまだこれからである.震災のことはつらつら書くまい.研究記録として書いているこのブログには、生活も研究の一部と考えて書いてきた面もある.震災はそう言う意味で僕の人生に大きな影…

地震.

素粒子論グループ会員の安否情報を記入参照できるホームページを立ち上げました.関係者の方々、詳しくはsg-l 6306を参照してください.この作業に携わっている全ての方に感謝します.

展望会.

10分間という短い持ち時間で、今年一年の自分の研究を振り返り、来年一年の展望を語る、というのは簡単ではない.しかし、10分間に凝縮しないと見えないことがたくさんある.本郷の初田研で毎年開催しているらしいそのような会を参考にして、展望会と名…

RCNP。

古い雰囲気の講義室。緊張した雰囲気で覗くと、がらんとした静かな講義室が目に入った。一目見て、そこで講演をした前回の雰囲気がありありと思い出された。前回は研究会の中の招待講演として呼ばれ、楽しく話したものの、やはり超弦理論に興味の無いハドロ…