Moriond conference終わり。

食事をしているとテーブルで自然と話が始まりそして議論ができるのは、ここで一週間参加者全員がゆったりと時間を過ごしているためなのは明らかだ。まあ僕はこの研究会ではほぼ完全に門外漢なので、ここで得た経験がすごく研究に生かされるというわけではもちろん無い。でも、「QCD」と銘打って長年続いている有名な研究会でどのように何が議論されているかを知ることができたのは、今後の自分の研究のバックグラウンドとして生きてくると思うし、生かしたいと思う。結局この研究会はかなり実験のほうに重点を置いたものなので、QCDの理論と言ってもずいぶんと僕の想像していたものとは違った。コミュニティーがここでも若干分断されているのか、それとも、僕の想像しているような「QCD研究会」は実は無いのか、それは分からない。いや、きっとあるんだろう、僕が知らないだけで。例えば、閉じ込めが証明されたという話とか、3次元YMが解けるという話とか、そういう単語が一切出てこないのは、いくらQCD研究会の理論部門と言っても、やはり実験にかなり寄っている方面だけだったといわざるを得ない。格子はもう別のコミュニティーに分離している感じがして、ここではあまり発表が無かった。その中で、格子の人といろいろと話ができたのは大きかった。自分の論文をreviseしないといけない。

Hongさんとはいろいろと話ができて、お互いに進行中の研究を少し話したり、holographic QCDの問題点をいろいろと話したり。Hongさんに進められて途中からスキー学校に入ったので、一緒にスキーを勉強できたのも楽しかった。思い出してみると、ハイゼンベルグの時代から、ヨーロッパでは特に実験の人たちを中心にスキーを通じて交流を図るという伝統がある。それに参加できたのが嬉しい。議論を始める前の挨拶は、「スキーはどうだった」という挨拶になる。そういう、全員が参加する一つのactivityが物理の交流を大幅に促しているということが興味深い。まあそれも時間がたっぷりとってあることの恩恵だ。僕はスキーをあまりしたことが無いという理由だけでニセコの冬の学校には行っていなかったけれど、今度そういう学校があれば、行ってみたい。スキーでは何度もこけて苦労したけれど、こけた分だけうまくなってはいるだろうし、そういう風にスキーを通じて異文化交流するのも楽しいだろう。今回は自然とアジア系の人と話す機会が多かったように思う。いや、もちろんヨーロッパやアメリカの人ともよく話したけれど、アジア人はやはりスキーになじんでいないせいか、スキー学校で親しくなったりするわけで。

休憩時間にたくさん計算もでき、議論もし、分からない実験の話も浴びるように聞き、そんでスキーも。たっぷりの一週間だった。

ふとスキーをとめてモンブランを見た。白い山の荘厳な美と物理の美への思いが重なって、不思議な感動だった。