IPMU発表。

今日ようやくIPMUのquantum blackhole workshopでの発表が終わった。やっぱりブラックホールとは直接結びついていない話なので非常に心苦しかった。結びつくんじゃないかといろいろ思っていたのだけれどどうもやっぱり違うようで、それを正直に話すしか残された道がなかったから、そういう発表になってしまった。それでも、面白かったといってくれる人がいらっしゃって、特に大栗さんに言ってもらって、とても光栄だった。途中でレビュー部分が多かったからか、しらけたような感じになったのが残念。構成を練るのが足りなかったかも。後半では非常にたくさん質問が出たので、それはそれは嬉しかったのだけれど、結局時間をおオーバーしてしまい、これまた申し訳なかった。僕はこの発表を通じて、知らなかったことをたくさんいろんな人に教えてもらえたので、とてもありがたく思っている。こんな僕に発表の機会を与えてくれたオーガナイザーの方々に感謝。これで、もう少し計算をして簡単なアイデアをまとめた論文をすぐに出したほうがよいかもしれない。発表してしまったので、おたおたゆっくりしてはいられないのは明らかだから。できることは限られているから、今日いただいたたくさんのコメントとともに検討して。

それにしても頭痛がひどい。睡眠不足が続いているので、風邪気味なのかもしれない。結局トラペのプロットができたのが昨日の夜1時半頃だったから、今朝は6時半に起きたので、5時間しか寝ていない。僕は大学院生の頃は9時間寝ないと研究できない体だったので、その頃と比べたらえらく無理をしていることになる。もっとも、子供ができてからは、睡眠時間がずいぶん短くても何とかなる体にはなってきたけれど。どうも頭が痛いので、今回の発表のためにちょっと中断していたいろんなメールや議論にすぐ復活できそうもない。それでこの日記を今TXの中で書いている。仕事を始めるのは明日からにしよう。

今日一日はまたいろいろあってとても楽しかった一日だったけれど、今日は論文[0809.2137] Toward a Proof of Montonen-Olive Duality via Multiple M2-branesが出た日でもある。寺嶋さんと戴君との論文で、Montonen-Olive dualityの証明に向けて、という論文。ABJMで仕事ができたというより、独自の方向性でABJMを初めて物理に「利用」した、という風な位置づけが自分の中にしっくりくる。Mukhiたちの仕事が出て、これはかならずnonabelian dualityの証明に使えると思って以来、いろいろと考え試行錯誤して、共同研究者と四苦八苦して仕上げたこの仕事は、もともとのmotivationであるmontonen-olive duality以外にも見所がたくさんあり、自信をもって面白い仕事だといえる話になったと思う。theta termのdeconstructionとか、CS quiver diagramの新しい幾何学的解釈とか、いろいろと側面がある。大栗さんにもお昼に少し聞いてもらって、たいそうありがたかった。Mukhiとも早速話をする。(ABJMに興味がない人も、MO dualityに興味があったら是非見てごらんになってください。)韓国KIASの、来週の研究会ではこれを話すつもりにしている。韓国の人たちが好きそうな話ではないかと勝手に思っているので、議論をするのが楽しみ。先日の日記で、すごいことが示せた気がすると書いていたのはこの論文のことで、MO dualityが証明できたのではないかと思ったのだった。結局のところ、その論文のabstractにも書いたのだけれど、我々の示した場の理論の手続きによるS変換は、パリティー変換と同定できてしまう特殊なものに限られており、残念ながらMO dualityの証明とはなっていない。しかし、おそらく場の変換でT変換を実現できたのも初めてのはずなので、かなりnontrivialであることは間違いない。実際、計算していてnontrivialさに自分でも驚いたくらいだった。まあ、違うことを予想していて計算してその結果が美しく期待はずれだったので、それだけといえばそれだけなのかもしれないけれど、あのlinear combinationでT変換が実現されるとは、美しい。

偶然にもMontonenのいるヘルシンキからお誘いがかかったので、行ってみることにする。Montonenってどんな人だろう。僕の話に興味を持ってもらえるだろうか。研究会はいろんな人といろんな議論ができるのが楽しい。特に、興味の近い人が多い今回のような研究会は(quantum BHという観点では僕は遠いけれど)、あってすぐ具体的な議論ができるので楽しい。今日の自分の話も、土曜日は電車の帰り道で真君に聞いてもらってよくいろいろと分かったし、ABJMの話もすぐにお昼やお茶の時間に深いところまでできる。

次は韓国の研究会のトラペを書かないといけないが、これは、もう出来上がっている話なのできっと時間はかからないだろう。今回のように、こんなに直前までプロットが完成しなかったトークはいまだかつて無かったように思う。あんまりぎりぎりなのはもう経験したくないねぇ。

頭痛がする・・・でも、発表が終わって、ホッとした。今日は深く眠れそう。