論文。

1月の5日に判明した衝撃の事実、は、先日出した論文に関することだった。書けない書けないと言っていたのは、研究上の理由で。というのは、5日に、僕たちの研究と同じStrategyで核力を計算しているような論文が出ていたからだ。僕たちは、思い出せば2007年の3月、KEKであった研究会「超弦理論ハドロンの再会」でこの研究をスタートさせたのだけれど、それからすでに二年弱が経過している。研究成果の半分は去年6月に出すことができて、残り半分の研究を続けていたのだった。1月5日、あせりながらくだんの論文を眺めてみると、どうも我々がすでに一年ほど前に到達していた結果だけのように見えた。そこで、我々の今までの計算結果のノートを纏め上げて論文の形にして出すということになった。

それから三週間、大変だったけど、なんとか論文を出すことができて、とてもうれしい。2007年3月からの夢がかなった感じがしている。内容は、holographic QCD で近距離核力を計算するというもの。弦理論で核力を計算できるという、なんとも確かに夢のような研究だ。もちろん、holographic QCD 特有の、ラージNとかいろんな点はあるけれど、それでも、ね。共同研究、とても楽しかった。

論文を出したその日にすぐ反響があるというのも、珍しい気がする。早速、筑波大学と基研にセミナーに呼んでいただいた。良い議論をしたい。スライドの準備を始めよう。運よく韓国の研究会にも呼んでいただいているので、そこでも宣伝しよう。

この一週間は過酷だった。明らかに体が言うことを聞かないほど、今朝は体がだるく重かった。それは昨日のノーベル賞解説トークというのが原因の一部で、やっぱりものすごく緊張してしまい、その後の交流会でははじけてしまって楽しくいろんな方と話して、それでくたくたになってしまった。DNAのたたみこみ(?)の研究をされている方といろいろ話をさせてもらって、それはそれは面白かった。

昨日一日が楽しかったのはもちろんだけれども、結局のところ、「解説セミナーでよくわかりました」といってくださる方は少なかった・・・ある程度予想していたものの、それは残念。自分の力の無さを感じる。自発的対称性の破れ量子力学のような有限自由度では起こらないので、場の理論で正面から説明することにし、南部・小林益川の仕事を紹介することはできずに、ヒッグス機構の計算を聴衆に式でフォローしてもらうという荒業で臨んでみた。それは果たして成功だったのかどうかはわからない。そもそも20分で説明できるはずが無い、というのは逃げだろう。

疲れたので、これから昼寝。