格子研究会@理研。


週末は、次世代格子ゲージシミュレーション研究会。研究室の前沢君飯田君、おふたりの活躍で、大変活発な議論がなされたことは、参加者の方々はご存知のはず。おふたりの仕事量は相当なものだったので、研究会がとても盛り上がり参加者ひいては組織者にもとても良い時間となったことで、彼らの努力は報われたものと信じる。

研究会、とにかく質問や議論が多い。弦理論の集いの研究会もそうだったし、これは理研の川合研の伝統から来ている。人が集まってそれぞれ講演をし議論も少なく若干交流だけして終了する研究会が頻繁に見られる中、このように、議論中心で講演が全然進まない研究会はほとんど無い(素粒子分野で)。理研の研究会は、とにかく分からないことはとことん質問して議論するスタイルであり、これは、仁科・朝永の時代の研究室を受け継いでいると言ってもいい。

このような研究会の方式には賛否両論あるかもしれない。つまり、話を最後まで聞きたい人も多いわけで、それを聞きそびれることもある。しかし結局は、話す側の技量と座長の技量で、そのような問題は回避できるはずのものだ。実際、格子研究会でも、質問がたくさん出るため、初めに結論を述べてから話し始める方もいらっしゃったが、それが本来正しい講演方法だと僕は思う。

まあ何にせよ、楽しい研究会だった。熱・素・核が3日それぞれに分かれ、専門家がその分野のレビューを他の分野向けに話す、という基本構成は、講演者のご努力によりかなり成功を収めた。例えば、中務さんのレビューはとても親切で、研究の状況が一望できたし、僕のような素粒子畑で育った人間にはとても良かった。いつも近くにいらっしゃるのに、このような話をゆっくり聞けたのは初めてのような気がする。おそらく参加者のほかの方も同じような感想をもっていると思う。

最終日の方々の講演で、holographic nuclear force, holographic nucleiを引用してくださる方々がいらっしゃり、それはそれは嬉しかった。4ヶ月ほど前に、飯塚君と核子の三体力を計算したのだが、その講演では、格子計算がついに三体力を!の報告で、なんと我々弦理論の結果と比べてくださったのだ。核理論の分野で、超弦理論と格子QCDが数値を競う、そんな夢のような場所が目の前で展開されていた。感動。これってすごいよね。10年前ならまったく想像もできなかった時代に突入した感がある。超弦理論の手法は色々とまだまだ解決すべき点は多いが、それは格子QCDも同じことだろう(と言ったら格子QCDの人がどう思うかな・・・)。とにかく、「次世代格子ゲージシミュレーション」の広さを堪能してその可能性を垣間見る研究会だったが、原子核超弦理論で、という自分の研究の動機が一段と強くなったのは疑いない。

弦理論の集いと一部オーバーラップしており、格子のほうの初めの面白そうな講演を聞き逃したが、弦理論の集いも面白いのだから仕方がない。先週はなんとも楽しい一週間だった。弦理論の面白いことの一つに、まったく関係がないと思っていた二つの物理がいきなり実はおとなりどうし、もしくは同じものの二つの側面だった、ということが判明する瞬間がある。今回も、はからずとも、そんなことが何回か。びっくり、で、楽しい。次世代格子ゲージシミュレーション研究会でも、そんな新しい考えとの出会いがたくさん発生していたらいいなと思う。