熱化。

QCDでバリオン数を手で上下させたら、系が熱化する。強結合でそんな事が計算できれば、LHCなどの重イオン衝突を近似できるんじゃないか。非常に速い熱化現象を説明できるんじゃないか。


そう思って始めた研究は紆余曲折を経てもう半年が経過していたが、ようやく先週、飯塚氏と岡氏との共著論文をhep-thに上げた。重イオン衝突と比較するのは僭越なのだが、RHICやLHCでのパラメータを実際に代入してみると、非常に速い熱化を得る事が出来た。

ホログラフィックな計算なので全て高次元重力で計算するのだが、それが直接今地球の裏側で行われている巨大実験のミステリーを解明するかもしれないって、想像するだけでワクワクするねぇ。楽しい!高次元重力側で長い計算と議論を行った後に、具体的なパラメータ数値を代入する時はさすがにドキドキした。これがRHICとかで報告されている速い熱化を説明できたらすごいなあ、と。そんで計算したら、1[fm/c]ってでるやん!!ふわー。

Q-ballとchiral magnetic effectの論文を出し、この熱化の論文を出して、無事年末を迎えられる事となった。いや、年末というより、出産・・・

今パソコンを叩いている横には生後5日の娘がすやすや寝ている。こんな感覚は7年ぶりやわ。人生というのは不思議としか言い様が無い。7年経って再び、赤子を膝に乗せながらノートで計算する日が到来した。

この娘の顔を見ながら、今年一年を静かに振り返ってみたりする。テレビの無い我が家は、上の子が寝てしまうと静寂に包まれる。火の用心、の拍子木の音が遠くに聞こえる。

4月、9月に引っ越しをした研究室がここまで育ったのは、まさに室員の皆さんのおかげ。とんでもなく楽しい日々を送らせていただいた。研究室の論文番号RIKEN-MPも既に10まで進み、プロシーディングスを入れるともっと大きくなる。共同研究では新しい発見と考え方で議論のたびに目を見張り、セミナーでは分からないところをとことん議論。思い出すシーンは数々。笑顔と、緊張と、興奮と。それもこれも全部、室員のみなさんと、支えてくれる周囲の方々のおかげ。

今年は本当に皆さんにお世話になりました。良い年をお迎えください。