物性物理と超弦理論.

物理学会の年会が終わり、ほっと一息ついている帰路の新幹線の車内である.

学会では、午前と午後のセッションをそれぞれ1セッションとすると素粒子論領域で7セッションあったのだが、素粒子論の部屋に座ったのは結局そのうち3セッションだけだった.残りは他の領域をうろうろ.物性の領域1(量子エレクトロニクス)、領域5(光誘起相転移)、領域8(強相関電子系)や、理論核物理、宇宙物理などのシンポをはしごする.面白いものもあればまったく言葉がわからないセッションも.楽しい.

新幹線に乗って、なんだか寂しい気分になったのは、素粒子論のセッションに座っていた時間が少なかったせいか、友人たちと会って議論したりする時間が少なかったからかもしれない.夜は素粒子論委員会と素粒子論懇談会、無事委員長の一年が終わったのも、ホッとしたのかもしれない.物性のセッションに行って、新材料とかまったく分からずポツンと過ごしたのが思い出されて俺なにやってんねんやろなと思ったのかもしれない.

なにしか学会が終わって、今年度が終わって、なんとなくまた日記を書く気分になって、新幹線で久しぶりに書いてみることにしている.久しぶりと言えば、この3ヶ月、日記を書かなかったのだが、それも研究に没頭していたからだ.今日、その成果の論文を二つ出した.

一つ目は飯塚君との共著で、超弦理論を物性に応用する話.ランダウフェルミ流体で成り立つラッティンジャーの定理(フェルミ面の囲う体積が荷電密度に比例するという関係式)を、重力理論に等価に写したときに、どの程度ユニバーサリティがあるのかを調べた.フェルミ面の重要な性質が高次元重力におけるガウスの法則で表される.面白すぎるよね.

二つ目は飯塚君と格子QCDの青木慎也さんとの共著で、超弦理論原子核理論に応用する話.フレーバーが3以上の量子色力学を等価な重力理論に写し、バリオンにユニバーサルに斥力芯が存在するということを示した.中性子星の中心の物理に貢献できるかもしれない.この論文には、非専門家向けの長いレビューを付けた.超弦理論によるクォークの力学の計算に興味を持つ方にぜひ見ていただきたく思っている.

いずれも様々な議論や計算が思い起こされ、それが今日、世に出たのは、大変嬉しい.で、ホッとしている.読んでやってください.

以前は学会に参加しながらプログラムに面白かった講演の講評を自分で書き込んだりしていたものだが、結局学会から帰って来てそれを見直したりはあまりしないので、自己満足に陥っていたことに気付いた.で、今回は、ノート1ページに、今後研究になりそうなタネだけをメモしてみた.さて、それがどれだけ育つかな.学会や研究会は、自分の研究成果を議論するためだけのものではなく、タネを見つけるためのものでもある.今回は少しタネが出来たので、それで良かったことにする.安心してしまわないようにせねば.

新材料のシンポを聞いていて、良くわかった.自分の興味はここに集まっている人たちの興味の方向と直交している.ツライ.だからこそ聞きに行って良かった.僕の物理を掘り下げるということは、他の人の物理を知り、直交する方向に掘ることだ.