論文が・・・

先週に出たShifman-Yung、あれは、勘弁してほしかった。寺嶋さんと衛藤君と去年、susy-breaking meta-stable vacuaのsolitonという論文を書いたのだけれど、そこで書いたvortex解と同じものがそのまま勝手に書かれており、しかも我々の論文への言及もない。メールを書いたら、忘れていたそうで、謝ってきて、reviseで加えると言っているけれど、そういう問題やないやろ。かなわん。はよreviseしてほしい。

しかも、その去年の論文で書いたvortex解がQCD stringと関係しているのではないか、ということを、去年論文を出した時点で既に我々は認識していて、あらかた見当はついていた。今はそれを急いで仕上げるので毎日大変。Shifman-Yungは結局、我々の解にQCD stringという解釈を与えただけなのだから、そして我々はそのずいぶん先を既に行っているので、別に急いで出す必要も無いといえば無いのだが、それでも、この状況を放っておくのは癪に障るので、まあ来週中には論文を出そうと思う。今週いっぱいかけて書いたドラフトは、もうほとんど完成している。まあ、去年の段階で第二段の論文をすぐに出していればこういうことは無かったはずなんやから、ほったらかしていたのが失敗やったかもしれない。いやいや、我々は別に悪いことはしていないから、「失敗」ではないんだけど、研究は早くやりましょう、という当たり前のことをまた勉強しただけかも。

そういう中、月曜日は筑波大学セミナー。筑波大には、latticeの人たちと弦理論の人たちとがいるので、このholographic QCDの話をするにはまさに最適と言えるかも知れない。セミナー直前までトラペを書いたりして、臨む。谷口さんにもたくさん質問してもらい、セミナーのあとでも色々と議論させてもらう。やはりlatticeの人ときちんと話せる機会があるのはすばらしい。弦理論の人間である僕が、QCDを通じてlatticeの人たちと対話できるという、そのことが、非常に楽しい。

筑波大学に少し早く到着したので、朝永記念室を訪ねる。連絡を事前にして、案内していただいた。入るとすぐ、あのダイソンの自伝に登場する逸話がパネルになって大きく飾られていた。それを読み返し、再び感動。この話は、たしか去年の3月の学会で亀淵さんが話されて、感動を呼んだ話の一つ。あのセッションは感動的だったけれど、今回こうして朝永の自筆の論文原稿や絵画、朝永が研究に使った机を目の当たりにすると、まさに言葉も無い。貴重な時間を過ごすことが出来た。ケンブリッジでマックスウェルの机を触ったけれど、それよりも、やはり日本人である朝永の机は、非常に臨場感があって、同じ時間の流れの中に生きているんだなという実感を持つことが出来た。これは、朝永の机が、僕が中学生・高校生の時に父のお古としてもらって使っていた机とそっくりだったせいもあるかもしれない。記念室は7月から新しくリニューアルするそうで、ぜひまた訪ねてみたい。

木曜日は駒場の文献紹介で発表。QCDから弦理論が出てきたわけだから、その当時の弦理論とハドロン物理の関連を、現在の視点から見てみよう、という趣旨での発表をした。当時のことを実際に経験している米谷さんのコメントが記憶に残る。ま、自分の研究がここからどう発展するかは分からないけれど、少なくとも一つの面白そうなアイデアはあるので、それを考えてみたいと思う。

今日は、本当に久しぶりに朝からゆっくり休んで、こうして日記を書いている。明日はAndreasと東京を楽しむことになっている。核構造の話をじっくり聞こう。