ファインマングラフの計算。

もう本当にずいぶん長いこと、ファインマングラフの計算を符号まで入れてきちんとやって、それから運動量を積分して崩壊幅を出す、という計算をやっていなかった。それをいまやっているのだが、いろいろと間違いや勘違いがあって、大変。共同研究者の寺嶋さんと一歩一歩やっている。懐かしいのなんのって。九後さんの教科書の崩壊幅の計算のところを読み直すと、当時四回生の自分の書き込みで、「ここのファクターに注意」などとある。それからもう12年たっているわけだが、同じところで今回も間違えている。成長していないというよりは、この計算を12年もやっていなかったというせいにしたいが、崩壊幅の計算を12年もやらないで、それで素粒子屋を自称しているほうが問題かもしれない。崩壊幅を計算すること=素粒子屋、という図式がもちろん間違っているのだが、それにしても、そんなに長いことこういう計算をやっていなかったとは、と、自分で振り返ってみて、驚くばかり。

このところまた、PDGのデータブックとにらめっこしたり、hep-exの論文を眺めてみたり、楽しい。まさか自分がhep-exの論文を調べるなんてことになるとは思いもよらなかった。これをもって良い経験と言わないとすると何というのか。

おかげで計算は収束しそうな感じがしている。(って、もう来週は近大の基研研究会なので、もうポスターを書きはじめないといけない。うむ・・・・書き始めよう。)Mathematicaのcodeにはバグがいろいろとあり、寺嶋さんにも迷惑をかけるが、ああ、ここが間違っていたのか、と発見したときの感慨もなんというか妙に大きい。ある日は、家を出て歩いて大学へ行く途中にバグを発見し、それを訂正したら一ヶ月の計算が閉じるかということが気になりすぎて、歩いている途中でパソコンを起動し、バグを修正して・・・・大学の建物の入り口でちょうどMathematicaが走り終わり、計算がうまく行っていることが確認できた。まあ、間違いなんてそういうものなわけね。

昨日は本郷の実験(ICEPP)でセミナーをさせてもらう。CERNと中継されていて、あちらは朝の8時、こちらの午後3時。中継システムって、すごいね。まるですぐ隣にいるかのように普通にセミナーで質問したり、会話したり。実験の方々に、どのくらい詳細が伝わったかは謎だけど、何とか言いたいことは伝えた気分でいる。楽しかった。今学期はたくさんセミナーしたなぁ・・・それも昨日で終了。あ、来週のポスターを、もう忘れたことにしてしまっていた、書かないと。

昨日はセミナーのあと滑り込みで中山君の送別会へ。あと二ヶ月で自分も送別される側になるということをいきなり実感して、妙な気分だった。先週は、学生基礎実験の最後の懇親会で、花束をいただいた。花束なんて、人生で初めて。お世辞にも得意とはいえない実験を六年間やって、周りの人にも助けられ、いろんな意味で勉強になった。東大生がどういう学生か、一人ひとりと話すことで、少なくとも一部の側面はよく分かったし、物理における実験と理論の意味もずいぶん考えさせられた。時々実験の先生と話をしたり、学生実験の向上のための議論に加わったり、思い出すとやっぱり、授業という責任の中で、いろんな経験をさせてもらったと思う。学生基礎物理実験の担当のみなさま、ありがとうございました。

理研に行くと学生がほとんどいないはずで、その刺激が無いということが自分にどういう影響があるのかは分からない。幸い、今年度は二箇所で集中講義をさせていただけることになったので、そういう場を、自分に対する刺激に出来ればと考えている。