埼玉大学での集中講義終了。

先週は一週間、埼玉大学の数学科で集中講義をさせていただいた。講義を受けに来るのは大学生と大学院生。いわゆる数学崩れの僕が数学科で集中講義をするということに非常に気が引けていたけれど、結局、やっぱり、物理の講義を毎日やってきた。ま、それしかでけへんし。

講義の最後まで聞いてくださった学生さんたちがどのように感じられたかは全く未知数。なので、招いてくださったKoyaさんの感想しか外部評価(?)は無いのだけれど。自分としては、書いた本の内容をじっくり話せる格好の機会だったし、それに、集中講義も含めてこういう講義の経験はあまり無いので、ありがたかった。Koyaさんには感謝している。

そもそもKoyaさんにSantaBarbaraで7年前にお会いしなかったら、こういうことはまず無かったと思う。あの当時は、お互いなんとなく数理系の研究をしていた人間だったとはいえ、研究の話をした記憶が無いので、研究上の交流ではなかったと断言できる。日本人だ、というそれだけで、非常に楽しく話が出来た、それしか覚えていない。それなのに、日本に帰ってきてからしかも7年たってから、こういう風に研究上でつながることが出来るのは、不思議だとしか言いようが無い。

最後の金曜日には談話会で研究内容を話させてもらった。数学科の先生方の前で物理の話をするということはまた気が引けたけれど、物理の人間がやりたいと思っていることと、弦理論の新しいアプローチ、これをなんとなく分かってもらえたのではないかと思う。その夜は、先生方と、Joさんも合流してくださって、11時まで楽しく飲んでいた。数学の先生方という、近いようでなかなかこうやって飲みながら話す機会の無い方々。こないだのテレビのペレルマンはどうだとか言ったり、教育の話になったり、物理と数学の違いの話になったり。一週間埼玉大学にお世話になって、その締めくくりにあんなに楽しい時間が待っていようとは思っていなかった。Koyaさん、ありがとう。

埼玉大学の講義期間中は、講義ノートを作るのに手一杯で、研究がまったく出来なかった。もちろん、学生と触れ合える機会というのは、研究所に身分が移ってからはなるべく大事にしようと思っていたので、それでいいのだが、研究のほうが進まないのは困る。今週から身を入れなおしだ。来週はKEKセミナー。その後台湾。

今日は川合さんと話す。西島先生の仁科センターコロキウムで、猪木先生などたくさんの方が研究室に見え、研究室がとたんににぎやかになった。いろいろな思いが頭を駆け抜けていく気がするが、どうなんだろう。今日は理研に移ってからの意味で、ありがたい非日常だった。とても刺激になり、研究への活力になる。

週末は、思いもよらず博物館へ二つ。一つ目は、もう終わってしまいそうだったので夏目漱石展。寺田寅彦の直筆葉書を眺め入る。本物を見たことが無かったので、すばらしいの一言だった。夏目漱石よりも、寅彦の葉書を見に行ってきた、と言った方が僕の感じていることに近い。二つ目は、機械仕掛けの音楽、というタイトルの、駒場博物館の展示。実験的音楽の展示ではその創作者がいらっしゃったので色々と話を聞く。Stafanを思い出す。楽しい時間だった。まあ、娘は後者の展示でピアノが触れたこと、前者のでは江戸東京博物館が意外と子供にも優しかったこと、で、喜んでいたようで、助かった。

忙しかったり、物理に追われていても、時々はこうやって自分の好きなこと、好きだったこと、を深めることが出来る時間を持つのは大切だ。それは、研究にも生きると思う。