ガリレオガリレイ研究所。

今週から三週間の予定で、フィレンツェガリレオガリレイ研究所に呼んでいただいて滞在している。フィレンツェは花の都といわれているけれど、研究所は非常に美しく、このような研究環境で三週間もいられることに感謝するばかり。

ワークショップ自体はのんびりとしていて、週に三つほどセミナーがあるだけ、あとはみなで昼食を食べたり、好きな人と思うままに議論したり。みなが最低三週間くらいの滞在なので、非常にゆったりとしている。今回は家族で着たのでアパートに落ち着くまで多少ばたばたしたけれど、幸いアパートの方も親切で、近くにスーパーも見つけたし、何とか生活が軌道に乗っている。

火曜日はBeisertのレビューを聞くが、どうも彼が新しく始めようとしている話題のためか、全く面白みが沸かない。ちと僕は素人過ぎたかもしれない。今日のNick Doreyの話の方が分かりやすかった。そうこうしていたら、 廊下でばったり出くわしたご老人が、「お前はハシモトかね、来週セミナーを頼みたいのだが」とおっしゃる。それはもう喜んで、と答えると、火曜日はどうかねとおっしゃるので、いや火曜日はピサに呼ばれているのです、と答えた。「おうお前はケンのところに行くんだね」とおっしゃったのを聞いて、あら、このご老人はDiGiacomo先生だと気づいた。小西先生は学生だと微笑んでおっしゃっていた。まあそれはともかく、来週水曜日はここでセミナーをすることになった。偉い先生方がたくさんいらっしゃる前で話すのは、緊張して、よくない。しかも、幸か不幸か、Kutasov先生も聴衆にいらっしゃるようだ。たまたま論文がかぶったとはいえ、話し方に気をつけねばならない。これからKEKでのトラペに手を入れることにしようと思う。

今日のお昼は久しぶりに会ったAlexといろいろと議論をする。同室の方はflavor-braneのbackreactionをやっている人だと分かったので、それもいろいろと教えてもらう。分からなくて詰まっていたことをすぐにその専門家に聞けるというのはありがたいことだ。Sonnenschein先生にもようやく知り合うことができたので、来週に議論させてもらうことを約束する。

三週間あると思うと、気持ちがとてもゆったりする。日本から宿題にして持ってきたいろんな書類や原稿も手を入れつつ、広い部屋でゆっくりと研究できる。外国滞在ではなかなかゆっくりできないのが落ちだが、今回は一味違う感じがしている。何か一つでも、自分の研究の将来の方向の足しになるようなことが得られれば、三週間来た甲斐があったというものだろう。いや、もちろん、細かい「足し」はたくさんあるのだけれど(自分の研究発表も含めて)、それだけではなくて、もうちょっと大きい何かが得られないかと、期待している。

アパートからはサン・スピリト教会の塔とドームが見え、朝と夕刻には鐘がなる。美しいフィレンツェの夕暮れ。やはり都会なりに都会の喧騒もあるが、研究所やアパートはひっそりとしていて、いわゆる頭の中のイメージの、昔のヨーロッパのようだ。研究所の中庭にたたずんで、35セントのマキアートをすすりながら、そう思った。