現象論SI@台湾から帰ってきて。

台湾でのSIは、昔の僕が頭に想像していたSIとはたいそう違ったものだった。頭に想像していたSIというより、先週の弦理論・宇宙論パートのSIが、昔のままだっただけに、それと比較してしまったのかもしれない。参加者は140人を越えているし、その半数以上が日本人ではないので、公用語は完全に英語(というか中国語)となっている。講義をたくさん聞くスタイルで、その講師のうち、おそらく本当の現象論をやっていない僕は、半分エンターテインメントとしてトピックが選ばれたのかもしれないとも考えた。そうしたら、デリバーすべきは、きちんと計算がフォローできて後にも役に立つ講義というよりも、そのときに聞いてトピックの全体像がつかめるようなオーバービューで、しかも感覚的に判った気になるような、そういう講義だろう。それならできるかも、と自分で思ったので、そう思い込もうとしていただけの話である。

講義はトップバッターだったので、非常にありがたかった。他の人のすばらしい講義を聞いてしまった後だと、どうしようもないやるせなさと恥ずかしさが立ち込めて仕方なくなるのだけれど、トップバッターだとそういう心配は無い。後で考えると、やはり村山さんのすばらしいお話の前に、自分の講義が全部終わってしまっていたのは、精神衛生上よかった。

どうも100ページ以上用意した時点で、全部話しきるのは不可能とはじめからあきらめていたのがよかったのかもしれない。結局第一回の講義では、15ページしか進まず、かえってそれがよかったようだ。というのは、たくさんの方に質問をしてもらったので聞いている方々との意思疎通ができたということと、やっぱり現象論の方々を相手にしているので僕の感覚が全然とんちんかんになっているかどうかの判断がその質問と議論を通じてできたからだ。坂東さんの大阪弁の質問(と言っても英語の大阪弁だが)がやってくると一安心だった。

オーガナイザーの方々には講義を気に入っていただけたようで、まあこれがエンターテイメントセッションの役得というものだろうと思う。三回の講義終了後には、トラペが残っているのを藤川先生が察してくださったらしく、議論の時間を更に設けてくださった。そのせいか帰国して疲れがひどかったけれど、やり応えのあるよい経験だった。村山さんや、Pomarol、Shihと少し話せたのも嬉しい。

SIらしく、夜もリゾートホテルの四方で議論している人々を見かける。主に日本人が目に付くが、やはりSIの伝統がそこに見えて、嬉しかった。一日目の昼は平山と瀧見君と議論しつつ山を歩く。楽しい。美しい杉の公園を歩きながらいろんなことを思うままに議論するのはとても楽しかった。二日目の夜は平山とホテルのバー(?)で台湾麦酒を飲みながら議論をする。いろいろと理解も進み、ピアノ演奏を聴きながら議論できるのが楽しかった。

それにしても、講義の用意の合間、現実逃避のために計算をしていたら妙な結果になってきたので、困る。行きの飛行機ではがむしゃらに計算していたのだが、結果がなんとなくまずい感じになっていた。それで、バスに乗り込むまでのところで計算をストップさせておいて、続きは帰りの成田からの京成特急の中で。そしたら、まずい結果になってしまった。ふむ。

帰りの飛行機では、最新映画を見ることはやめて、ビューティフル・マインドを観る。やっぱり名作やわ。いろいろと、胸の奥に突っかかっていたものがあらわになって、増幅された気がした。

来年は、SIは弦理論と現象論を一緒にやるらしい。めちゃ楽しみやわ。