原子核。

今週は原子核漬けの一週間。いろんなセンスを得た感じがする。勉強になったことも多いけれど、それよりも、素粒子原子核の物理のセンスの違いをずいぶん学んだ。

火曜日は本郷でセミナー。本郷と言っても初田研で、素粒子ではない。原子核ハドロン関係の研究会で何度かしゃべったことはあっても、研究室でセミナーをさせてもらうというのは初めてだったので、きっと言葉がほとんど通じないだろうなと覚悟しながら、のぞんだ。結局のところ、聞いてくださっている方々の辛抱強い質問で、2時間ほどになってしまったセミナーが無事終了。(長い時間付き合ってくださってありがとうございました。)ありがたいことに、そのセミナーの後、日が暮れるまで、初田さんと佐々木さん、そしてセミナーオーガナイザーの学生さんに議論に付き合ってもらう。議論というよりは、僕が原子核のM1のような質問をしてそれに答えていただいているような形だったに違いなのだけれど、いろんなことを教えていただいて、勉強になった。自分で原子核の教科書の一ページから読んでいくよりも、どういう物理がどういうところとつながっているかを、よく知っている人に聞くのが一番効率がいいのは明らか。巨大共鳴と一核子励起の関係をつけるところの物理がどうなっているのかを詳しく教えてもらう。ありがたかった。

水曜日と木曜日は、理研研究会「原子核物理の展望」に出る。ついでにポスター発表。まさに僕の立場はM1なので、ポスターが望ましい。ポスターの時間には、意外にもいろんな人に立ち寄っていただき、議論させてもらう。格子との立場の違いも議論させてもらったし、ゲージ重力対応については、どうやって導出するかということよりどういう物理に適用できるか、という質問が多かったところに、素粒子との違いが明らかに見える。休憩時間や懇親会では、知っている方が非常に親切にいろんな方に僕を紹介してくださった。門外漢の僕と顔を突き合わされた方はきっときょとんとされていただろうが、とてもありがたい。懇親会では、素粒子的な描像から原子核をやっていらっしゃるさる大御所の方といろいろと物理談義をさせてもらったが、素粒子原子核の違いという話がたいそう面白く、なぜ今まで僕が原子核の話を聞いていてもぴんと来なかったかが明らかになった気がした。こんなに近い隣の業界なのに、全く違った様相を見せているところが非常に面白い。いろんな話を聞くにつけ、いかに自分の物理のセンスというものが凝り固まった考え方に基づいていたかが良く分かった。まあそういってもすぐに広い考え方をもてるわけではないのだけれど、時々こういう隣の業界の詳しい方と一献を共にするというのはとても自分のためになるということを思い知った。

ヘルシンキから帰ってきて、やはりどうも疲れている感じがする。インドの時のように体重が減っているわけではないけれど、どうもいかん。推薦書をたくさん書いたりで計算もできん。頭の中に、やりたい計算がぼんやりと進んでいくけれど、手を動かさないとどうしようもない点まで来て止まっているので、どないしようもない。

来週はKEKの研究会を覗きに行く予定。議論してもらおう。