仁川国際空港にて。

APCTP2009研究会が終了して帰途についている。飛行機が遅れているので、ぎりぎりに到着した僕としては少しほっとしているが、周りで待ちくたびれていた人たちはため息をついている。ほとんどが日本人で、ようやく日本語を周りで聞くようになってきた。

研究会の場所へ行くバスは、山の中を貫く高速道路をひた走り、寂れた町のガソリンスタンドで停車した。どうやらここがHwengyeというところらしい。降り立って早速不安になりそうになっていると、後ろからHyeonjoonが肩をたたいた。迎えに来てくれると入っていたが、ほんまに来てくれるとは。ありがたい。それで一安心して、車で研究会会場のホテルに連れて行ってもらう。車中で、Piljinと内容がかぶっているようなことを伝えると、Piljinも気にしているといことだった。まあ、彼にあったら少し議論して話をすることにしよう、と腹をくくった。

ホテルはスキー場の目の前で、研究会往路グラムを見ると午後が丸々空いており、ニセコ研究会のようなスケジュールになっていた。ロビーにはスキーで疲れた人たちがたくさんうろうろしている。僕はスケジュール的には、発表の日の午後が一応空いているが、おそらくPiljinと議論することでつぶれるからスキーはあきらめるしかないか、と思いつつ、軽く食事をして、会場へ向かった。

久しぶりに会う人も多く、と言っても9月にKIASで会った人がほとんどだけれど、懐かしかった。HyunSeokが相変わらずの笑顔。そうしたら、Piljinが寄ってきて、早速話し合うことにした。どうも彼の話だと、one-boson-exchangeしかやっていないらしい。しかも、翌日に論文が出るとのことだった。おそらくこの研究会に間に合わせるためにぎりぎりでやっていたに違いない。それにしても、one-boson-exchangeだけだと言うのを聞いて安心した。われわれは、one-boson-exchangeももちろん論文に書いているが、それはメインではなく、2 instanton の計算をきちんと具体的に遂行して、それがone-boson-exchangeと異なると言うところが一番重要なところだったからだ。

彼とはいろいろと議論をしたが、結局のところ、翌日の発表では、plenary talkのためaudienceに非専門家が多いと言うことで、holographic QCDの基礎についてのレビューが大半になってしまうと言っていた。僕は二番目に話すから不利かと思っていtけれど、それを聞いて、実は僕のほうが有利になっていると知った。何しか彼は、詳細はKojiに任すという感じでKojiにバトンタッチするよ、と親切に言ってくれた。結局のところ、彼が何をどこまでどう話すかわからないので、彼が実際に話している間、スライドを加えたり削除したりと言う作業を一番前の端っこの席でやる羽目にはなった。けれども、振り返ってみると、やっぱりPiljinがほとんどのイントロの点を説明してくれていたので、大変助かった。非専門家の方にも、考えていることが伝わったのではないかと思う。創造していたのとは裏腹に、聞いている人にとってはPiljinの話と僕の話はうまくつながっていて逆によかったのではとも思う。

ちなみに夜のセッションは午後7時から始まって、初日は11時半まで、二日目は11時までで、みんな参加者はえらいい入れ込みようである。そういう自分も質問を決行してしまった気がするので人のせいにはできないが、こんな夜遅くまでフォーマルなセミナーを聞いたのは初めてかもしれない。

二日目の午後にPiljinと議論をしようと思っていたが、彼はもう昼食を食べたら帰ってしまうと言う。それで、昼食を一緒に楽しませてもらうことにした。APCTPの秘書さんにおごっていただいて、地元の名物のイカをいただいた。そのAPCTPの秘書さんは、今度の夏のわれわれのAPCTP研究会を担当してくださると言うことが後で判明して、いろいろと話せてよかった。

Piljinが帰ってしまったので、せっかくだからとスキーをする。おそるおそるゴンドラで山頂まで行ってみると、なんと景色の美しいこと。滑り降りる途中で少し立ち止まって振り返ってみると、まったく音のしない雪山の世界が広がっていた。しーんという音というのはこのことを言う。みるみるとLa Thuileを思い出す。視覚や聴覚と言うのは、時間を越えた記憶を瞬く間に呼び起こすというのをまた体験してしまった。

セッションが夜11時半に終わったにもかかわらず、その後はホテルの電気の消えたロビーで飲み会。ほんまに楽しかった。しかし、そのおかげでやっぱり寝坊して、バスに乗り遅れそうになる。しかし、バスのうんちゃんがものすごい飛ばしてくれたおかげで、なぜか乗り継ぎが美しく済み、ソウルでずいぶんと時間が余ってしまった。それで、ソウルのバスターミナルからは地下鉄+AREXで仁川に向かうことにして、途中の景福宮に立ち寄る。久しぶりに行ってみると、民族博物館は相当美しくなっており、また衛兵交代の儀式の再現もされていて、10年前に来たときとはずいぶん印象が違った。ロンドンの衛兵交代よりこっちのほうがよっぽどいいと思うのは、アジア人だからだろうか。

かなり研究と発表とそのほかが詰まった出張だったので、ずいぶん疲れている。羽を伸ばそうと思ってやった2時間だけのスキーは確かに楽しかったが、疲れを増大させている。飛行機ではサイレントのイヤホンで寝てしまおう。帰ったらまた仕事。計算の続きをやらんと。寝られなかったら、Piljinの論文読むかな。