前途多難。

昨日日記を書いてからそのあとうらうらと考え事にふけっていると、どうも書いたことは少し違うような気がしてきた。この一年の研究成果を振り返ってみると、どれも僕の好きな作品ばかりで、見れば見るほど自己満足度の高い論文だと思えてしまうような感じがする。もちろん、自分のことだからかなり贔屓目に見てということなのだけれど。なので、桜を見ていたときに沸き起こっていた感情は、別にきちんと去年一年間を振り返っていたわけではなくて、おそらくその桜を眺めていたときの自分の研究の見通しと勢いの無さが反映していたのだろうと思う。だから、昨日美しくしかも惜しげもなく自らの花びらを風に任せて落としている見事な桜を見たとき、その前とは全く違う感情が出てきたのだろう。思わず娘と花びらをかき集めて舞い上げたりして遊んでしまったのも、そういうことなのかもしれない。
今日は快調に論文を書いている。快調に書けるのは、そもそも前途多難なスタートだからだ。今成田空港にいるのだが、イラン航空がもう4時間も遅れている。テヘラン到着が夜の11時半の予定だったので、このまま4時間ずれ込むとすると、夜中の3時半になる。そんな時間にテヘラン空港に到着して大丈夫なんだろうか。いや大丈夫じゃないような気がしてきた。北京で飛行機は一旦着陸するらしいが、東京で遅れているので北京でさらに遅れる見込みが大きいだろう。そうしたらテヘランには朝に着くかもしれない。僕の講義は幸い午後からなので、まあそれには間に合うだろう。しかし、飛行機で寝てそのまま講義って、そんなんやったこと無いわ。体力を保持するよう心がけるしかない。夜中のテヘラン到着・・・どうなることやら。
そもそも、リコンファームが必要な航空会社なんてなかなか今の時代に無いような気がする。そのあたりから不穏な気がしていたのだけれど。まあ、テヘランの研究所が航空券を買って送ってくれたのだから、こちらには航空会社を選択する余地は無い。イランのビザを取るのも一苦労やった。それに、昨日研究室の人にイランの話をすると、「え、イランに行った人って、アメリカに入国できないんじゃないでしたっけ」のお言葉をいただく。確かに、インターネットでも、イランビザのある人の体験記ではほぼ全員「アメリカ入国の際に別室に連れて行かれた」との話が書かれている。僕は来週アメリカに行くというのに。何でこの時期にイランに行くことにしたんだろう。そもそも、今朝にKDDIのワールドカードという国際電話カードを取り出してカバンに入れるときに、ふとその裏の説明書を見ると、イランでのアクセスポイントが記載されていない。それで、KDDIに電話してみると、「イランではご使用できません」と来た。なんてこった。イスラム圏ではVISAカードは使えないとの情報を研究室の方にいただいたので、MASTERカードを作る。そしてこないだ地球の歩き方を見ていたら、「イランではクレジットカードの決済は一切不可能です」と来た。まじですか・・・・
そんな感じでこの二週間というもの、講義の用意をしつつもあまり行きたくない感が募ってきていたのだが、さきほど成田空港息の電車の中でぼんやりと「地球の歩き方・イラン」を眺めていると、テヘラン近傍の地図が目に留まった。そこには、点線で書かれた湖の境界線が描かれていた。あ、これ、ロプ・ノールみたいやん・・・・そう思ったとたん、イランにいけるのがとても幸せに思えてきた。ロプ・ノール、中学の国語の教科書で読んだ、さまよえる湖の話。国語の教科書で心に残っているのは、この『さまよえる湖』と夏目漱石『こころ』のみのように思う。ロプ・ノールは、僕にとって、本当に世界の最果てというイメージがある。いままで散々世界のいろんな国に行ったと思ってたけど、イスラム圏に行ったことないやん。行くからには楽しむしかない。そう思えてきた。
あー、こうやって日記書いていても、搭乗時間まであと三時間もあるやんけ。論文書き放題やわ。(泣)