基研にて。

イギリスから帰ったばかりだと言うのにまた移動してしまった。一日だけやと思ったら体が動いてしまう。基研のQCD・ハドロンのミニ研究会で、いろいろと勉強して今後の研究の方向に示唆もいただけるだろうと思い、出席した。知らない話も多いが、手法は素粒子でおなじみの手法なはずなので、分からないわけがないと思いながら、やっぱりなかなかついていけない部分も多い。いやいや、論理の理解をしに来たのではなくて、分野でどのようなことに皆さんが興味を持ち何を重要と思っているのかということを知りに来たのだったと思い直して、そこを聞こうと考え直した。一度聞いた話もいくつかあったが、前に聞いたときにこれが問題だったというのを思い出してみると、なかなか興味深い。

しかし研究会参加というのは、もちろん話を聞くことにも意味があるのだけれど、むしろ人に会って直接その人に質問でき話ができるということがより意義が大きいわけで、今回の基研訪問もそのような感じになった。福嶋さんや大西さんにいろいろと教えてもらう。教科書を一週間読んでも読み解けないことが、聞くとすぐに分かるというのはうれしい。数年前から気になっていたことをすぐに聞けたり、今まさに研究しているプロジェクトの対象の歴史的な側面などを教えてもらったり。教科書ちゅうのは、分かったことしか書いてない。むしろ、分からないことが知りたい。

他分野の研究会を聞きにいくと、現時点でどのような興味・方向性の研究が行われているかはよく分かるが、その分野で非常に基本的な問題とは何かということは一方で分かりにくい。それは、スピーカーの方々は基本的な問題点を聴衆の常識として考えているためで、そのような状況で、基本的な問題点の有無を会議場で質問するのは行儀が悪い。時間スケジュールがタイトな研究会ではなおさらだ。しかし、その分野の専門家が誰であるという情報はスピーカーの名前やスライドを見れば入って来るし、研究会の中途休憩や終了後にスピーカーの方とお話しするのは自由、いやむしろ喜ばれる(自分も喜んでいるところから推測すると)。それが実は最も楽しい。

火曜日の夜にホテルでぼんやりしていると、今やっているプロジェクトでどのようなことが重要なのかがなんとなく見えてきた。前の夜まではトリビアルな問題やと思っていた。トリビアルそうな側面もあるけれど、むしろそちらはconsistentであることのチェックということであって、その上に長いノントリビアルなものが横たわっているように見えてきた。これはよく調べねばなるまい。ほんまやったら無茶面白いわ。まあほんまやったらの話やけど。前にも、ほんまやったらすごいわと思って、やっぱり違ったということも何度もあるし、しかも、違ったと思ったらまたそれはほんまやったということも何度もある。そんなもんよね。一喜一憂するのが研究の醍醐味やし。今回もその一つかな。思いついてすぐに関連を人に聞けるのもまたうれしい。基研の地下の図書室で調べ物をして、むにゃむにゃ読んでみると、50年くらい前と25年前の物理に関係があるらしい。おもろい。ちょうどええレカレンス時間やわ。

世の中では、LHCがcollision成功したり、一方事業仕分けでむちゃくちゃなことやっていたりで騒がしいが、腰を落ち着けて作用を書こう。