核物理セミナー@仁科センター。

ずいぶんと準備をして臨んだ講演だったのだが、講演後、なんとも心地よい気持ちが残っている。うれしかった。
聞いていた方にとっては、不満の残るところもあるだろうし、色々言いたいことのある方もいるだろうし、完璧な講演というものは無い。けどね、こちらの主張は十分伝わった自信がある。そやからこれが議論の第一歩や、と。セミナーに来てくださった方々、ホンマにありがとうございました。
しかし講演というものは、貴重なみなさんの時間を一時間、自分に割いてもらっているわけやから、そんで自分の好きなことを存分にしゃべらせてもらえるんやから、幸運というしかない。ありがたい。昨日の核物理セミナーも、自分のしゃべりたいことを存分にしゃべらせてもらって、そんで、ところところで質問やコメントをもらい、興味を持ってうなずいてもらったり、実験の方から質問をいただいたり、会話ができるということが素直にうれしい。これが議論のスタート点やわ。うん、来週と再来週の、ブロアとトレントでの講演、これも力を入れて準備せんと。
ところで話は変わるが、twitterをやっていてほんまにうれしいことは、興味が近い人のつぶやきをぼんやり眺めていたら、重要でおもしろいことに遭遇することがあるということで。重要、というのは、例えば、自分の聴いてきた音楽ってほんまに星の数ほどみなあるだろうけど、その中で、これは自分の人生にとってほんまキーになる音楽や、というのがいくつかあるでしょ、そういう感じのこと。昨日、Twitterで「Symphony of Science」というグループの動画がリンクされていて、それをメトロ副都心線で眺めていたら、うっかり感涙してしまった。すばらしい。ファインマンがメロディーに乗ってつぶやくところ、大変秀逸なMIX、としか言いようが無い。もう存命でない偉大な科学者が、新しいメロディーに乗って、科学のすばらしさについて心に訴えかけるという、科学と芸術の最高のコラボの一つやわ。LHCのラップを観た時も感動したが、まったくそれ以上やった。
たまたま同時に、ドイツの親友からメールがあり、彼の新しい作品群のホームページを教えてもらった。量子力学、CG、芸術、教育、の融合。これがまたすばらしい。彼とは大学生のときからの付き合いだが、その頃から科学と芸術の融合をやると言ってその道を驀進している。大学院生の頃に見せてもらった「Light and Matter」という映画作品には、正直に感心し感動した。今はそれが、QEDという映画になって世に出ている。科学ショーをドイツ各地で開催したり、科学映画の賞を受賞したり、彼の才能はとどまるところを知らない。
そんな彼と出会ったのは、大学四回生のとき、ほんまに偶然、京大の物理教室の中庭で弁当食べてたテーブルに彼がたまたま道に迷って尋ねてきたときだった。「京都大学の高エネルギー物理の研究室はどこですか」このたどたどしくもはっきりした日本語で質問をするドイツ人が、生涯の友人になるとはその時もちろん思ってもみなかった。その後、彼は僕と同じ京大の素粒子論研究室に在籍し、素粒子、科学、音楽、そして人生について語り合う親友に。人生ちゅうのは不思議なもんやね。
僕の研究は素粒子原子核の両方にあって、その二つを関係付けるだけでも大変楽しいが、一方で、世の中には、素粒子と音楽、科学と芸術、をつなげようとしているクリエイターがいて、彼らの作品は、科学者をも感動させるとともに、社会との接点、出入り口になっている。とても努力の要ることであり、そしてとても重要なことやわ。尊敬してるだけじゃなく、自分も、ね。このブログを書いたりtwitterをやっているのはそういう意味もあるのだが、ま、結局自分も楽しくないと、続かないし、できない。研究と同じ。