トレントの夜。

ようやっと自分の講演が終わり、高揚感で体が満たされているので、夜一時だというのにまだ全く眠気がしない。日本はもう朝で、もうすぐ基研研究会のしょっぱなの講演が始まる時間やわ。
ホテルに戻ってきたのは12時を過ぎていた。トレントでのバンケットも楽しく、いろんな人が楽器を演奏しているのをのんびり聞いたり、いろんな人と議論したり。自分の講演の後でよかった。そうでなかったら全然楽しめていないところだろう。それで、ワインをすすって、高揚感。
ECT*はトレントの丘の斜面にある美しい建物で、何ともこじんまりしていい感じである。このサイズが非常に良いのか、それとも研究会の趣旨が完璧にオーガナイズされていたからなのか、この研究会はすごい議論の応酬の研究会やった。質問が出たらそこでスピーカーを含めた聴衆でふっかけ合いの議論が始まって、聴衆も渾然一体となる。こりゃ楽しい。きっと、この分野が非常に今発展していて、しかも皆の目的意識とそれぞれのアプローチが成熟してきておりお互いの良いところ悪いところが良く見えていて、非常に深いところで皆意見が言えるところが、この研究会の盛り上がりの要因だろう。なにしか聞いていて非常に楽しい。
自分の講演でも、果たして、やはりそうなった。講演の直前に半分ほどスライドを作り直すということを思い立って、なんとかぎりぎり間に合ったが、やってよかったと思う。やはり聴衆の興味と専門知識に合わせて自分の主張を組み立てないとまったくとんちんかんな講演になるのは明らかで、今までに何度かそういう苦い思いをしているので、努力はしてもしても足りないのだ。それで、作り変えないと後で後悔すると思ったので、何とか作り変えることにした。講演ではまったく予想していない方向からの議論がわんさか進み、ありがたかった。聴衆があまりにエキサイトしたので「ちょっとまて、俺の話を聞け」と僕が大声で怒鳴る始末になったり、「これから先5分間は質問をしないように」と教師口調で言う始末になったり、で、それはそれは楽しく、こんな講演は久しぶりだったように思う。講演のあとはすぐバンケットだったが、道すがらはIsmaelと、韓国で出来なかった議論をし、またバンケットでもいろんな人と議論が出来た。この研究者の社会では、講演する、というのはやっぱり自分を知ってもらうということと同義だから、講演する前としたあとでは、知らない人との知り合い方が1000倍も違う。今回もそれがよく分かった。この人には特に聞いてもらいたいなあと考えていた人と後で議論させていただいたりもして、目標も達成。それで、まあホクホクなわけ。結局僕は目標を身近に設定しすぎているということもあるのだけれど。まあいいや。
知りたかったことを直接専門家に聞いて理解できるというのは研究会の一番のいいことやと思う。そんで、全く知らない観点からのコメントをもらえるというのが、また、もう一つ、逆方面からのいいところ。また研究のねたが色々と増えたし、考えていることの違う方向性も見えてきたので、忘れないうちにノートに書いておこう。
呼んでくださったオーガナイザーの方と、講演を聞いてくださった全ての方に感謝。
明日は帰路に着く。