LHC/RHIC/重イオンとつながる。

自分のworldlineがLHCと絡んできたかもしれない。先週は時間を見つけて研究のノートまとめの作成。normalizationが思ったとおり間違っていたのを発見して、しっかりとやり直す。電荷量子化条件というのはかなり微妙やわ。で、どきどきして計算を進めた結果、RHICとconsisntentな結果が出て、一安心。これで、自信を持って論文が書ける。はよ、この結果で、RHICの流体の研究者と議論させてもらわないといけない。そやかて、もうLHCで重イオンを回し始めるからね。ええタイミングやわ。って、はよこっちも回さんと。

もちろんLHCと自分の研究が重なってくるとは、数年前の自分では思っても見なかったので、自分でも意外なのだが、それにしてもLHCは業界の大イベントやから、遠くから見ているだけではなくて、当事者になりたい。理論屋が当事者になるには、予言をするしかない。まあ今回の結果を予言といえば言いすぎやけど、でも、自分では自分なりの解釈で予言やと思って、それで結果が出るのを楽しみにしている。ちゃんと回り始めたらきっとすぐに解析結果が発表されるのかなあ。どのくらいのタイムスケールで重イオン衝突の結果が出るのか、実験の方々が論文をどんな風に作成するのがあまり知らないので、楽しみにするばかり。

面白いことに、もう一つの共同研究の方も、LHCと絡んでいる。で、そちらも最終段階に差し掛かりつつある。こっちもはよ仕上げないと。あとは不安定性の計算の解析をするだけになっているので、ゴールがすぐそこに見えている。LHCと自分が直接つながるなんて、なんと魅惑的。ふふふ。

LHCとか実験とつながるというのは、実際の研究に役立って楽しいわけだが、結局研究のつながりというのは人間のつながりであって、今回LHCとつながっていると言っているその理由は、共同研究者にある。前者は物性の方と議論しているし、後者はハドロンの方と議論している。で、LHCやRHICとつながったわけ。おとなりの業界の方と議論するのは楽しいけれど、議論しているだけではほんとの新しい物理は出てこない。議論するのと、論文を書くのは、天と地ほど違う。なので、こういう業界融和的な論文を書けるのはとても嬉しい。

先日研究室の方に教えてもらったのが、共同研究の「距離」を測るサイト。二人の名前を入力すると、共同研究者をリンクでたどっていって、何ステップで到達するか、そしてその経路を示してくれる。面白いサイトやね。例えばノーベル賞学者と自分が何ステップでつながるかとか、みな試してるんでしょ。楽しい発見やったのは、かなり昔の仕事(自分が生まれる前のとか)を途中で通じてつながっていたりして、へーこの人たちこんな共同研究してたんや、そんなんでつながるんや、とかいうのが結構多いこと。業界の人間って、自分の思っている以上につながっているねぇ。

共同研究距離の話は、数学では昔からエルデシュ数として知られていたもののはずやけど、物理のほうがきっとつながるのは短いね、共同研究多いし。10年ほど前に、共同研究の空間の相関関数を計算していた人がいて、サンタバーバラにいたときにその人の講演をとても面白く聞いた覚えが。(確か自分のサンタバーバラ日記にも書いてたはず。)誰と誰の共同研究が数が多くて、そのボンドを重みをつけて足し合わせる、とか。今回のこのサイトは、共同研究それぞれの重み(数)はウェイトにしていないね。それもつけたらまた面白いと思う。

そういえば、数ヶ月前のことになるのだが、「素粒子論研究者の業績」というホームページを見つけた。人名別に、hep-thに現れた論文の数やcitationを、ワンクリックで順位をつけて表にしてしまう。えらいページやわ。これって有名?昔から知られてたんかな。

もちろん自分がどう評価されているかはどんな人間でも気になるものであって、僕もこのホームページをいろいろクリックして眺めていたのだが、遊んでいるうちにちょっと恐ろしくなった。もともと、研究者の評価はこんな一元的なものではないし、こんなデータが一人歩きして、いろんな評価につながったらえらいこっちゃ、と。で、気づいたんやけど、そのページの一番初めのところに、注意書きと使い方が色々と書いてあるね。ほんまその通りやわとおもた。自分の評価を、ある一つの側面からでも一度数値化して冷静に眺めることは、人生のステージにおいて必要や。研究者は必ず評価されるからね。

でも、今度の自分の論文は多分、自分としては初めてhep-phに出すんやけど、そういう多元的な視点も絶対に忘れてはいけない。研究は議論を通じて始まる。信条。で、議論の相手が全く違う常識を持っているほど、面白い。そういう研究が形になってきた。hep-phに論文だすの、どきどき。楽しみやわ。