反物質チョコ?本日、理研一般公開。

「はしもとせんせーい、反物質チョコ食べてくださーい!」の声に、娘と駆け寄ってみると、なんとそこには、は、は、反物質チョコが!!しかもいろんな種類があるではないか.おそるおそる手を伸ばしてみた.反物質なら手を触れたら手が消滅してしまうことも忘れて・・・
ここは理研の研究本館6階エレベーターホール.山崎原子物理学研究室は、先日新聞などで取り上げられ有名になった、あの反水素の大量生成に成功したグループだ.今日は年に一度の、理研の一般公開.山崎研は、最後の手段をついに披露してしまった.「反物質チョコ」を配る!

物質は、反物質接触すると、対消滅し光を出す.反水素とは、水素の反粒子である.反物質チョコは、正確には反チョコとも言うべきものであろう.あ、手が対消滅する!そう思って手を引っ込めた瞬間、娘の手には反物質チョコが既に四つも握られていた.そう、これは、チロルチョコの特別包装だったのだ.包装にはしっかり、反陽子陽電子、すなわち反水素が印刷されていた.これ、レアやわ.
ほくそ笑みながら、娘とその反物質チョコを奪い合い、一つを口に入れた.すると、一瞬で融けて消えた.さっすが反物質.その甘さは爆発的だった.ガンマ線は出なかったと信ずる.反物質チョコは、意外なことに、キナコモチの味がした.
そんなこんなの理研一般公開.広い和光キャンパスの至る所で、科学とふれあうイベントがてんこもり.幼稚園の子供たちからおじいさんおばあさんまで、理研を広く解放し、科学の心をちらりと持ってもらうイベントである.今年はうちの研究室は、この時期に研究室構成員が何人になるか見当がつかなかったため、研究室としての参加は見送ったのだが、おとなりの延與放射線研のお手伝いをするという有志PDが立ち上がり、昨年と同様の磁石の担当をさせていただくことになった.僕もその解説員としてお茶を濁すことに.午後の自分の担当が始まる前に娘といろんなところを見ておこうと思って、RIBF棟などを回る.


小学校低学年でも作れる分光器.30分かけて一所懸命娘が作る.出来上がったのを覗いて虹色が見えたときの娘のうれしそうな顔と来たら.ふと横を見ると、50歳くらいのおばさんが、一人でまた一所懸命作っている.あーでもないこーでもないとうんうんいいながら、両面テープを貼っている.なんと素晴らしい光景だろう.日常的には科学研究に全く触れることもないであろう人たちが、自分の手で実験器具を作りそれで実験をし、科学を体験する.素晴らしいとしか言いようが無い.
轟音をたてて動いているスーパーコンピュータ、三等身になれるフレネルレンズ、空中に静止するシャボン玉、原子核衝突を見立てた空気砲、などなど、一日では到底全部は体験できない数の楽しい科学とのふれあい.娘は去年もらったビー玉が忘れられないらしく、今年も原子核衝突を擬したビー玉実験に並び、見事実験をしてビー玉を獲得していた.
自身の担当の段になり、若干緊張して持ち場に向かう.早速いろんな人が話しかけてくる.必死に対応していると、いつの間にか、宇宙ってすごいよね、対称性って何だろう、と熱心に熱心に語っている自分の姿があった.こちらが熱心になると、聞いてくださる方も熱心になる.この世の中は不思議だな、どんな風になっているんだろう.その気持ちを伝えたい一心だった.
小学生の子供たちにはクイズを出す.そのクイズに答えられた子供のうれしそうな顔と言ったら!で、その子が言った.「ぼくはしょうらい、かがくしゃになりたいんです」
ほんまに嬉しかった.「りけんでまってるで」