高校生のまなざし.

会場に入ると、目を輝かせた高校生が立っていた.あっという間に、自分が高校生だった頃の毎日の楽しさがよみがえってきた.いや、高校生だった頃やないな、大学生やろか.会場の高校生達の科学的レベルは、既に大学生のそれに達していると言っても良かった.すごいね.
埼玉西部地区の科学教育振興展覧会に講師として呼ばれてお邪魔したのだが、なんと言っても高校生のポスター発表のレベルの高さには驚いた.理科離れ理科離れと言うが、こんなに科学が好きな高校生がいるとは!ポスターに記述される科学的手法の鍛錬さ、使用している科学的レベルの高さ、などなど、大学の基礎物理実験レベルの発表が存分になされている.高校2年生やで.
自身が高校2年生だった頃のことを思い返すと、まるで恥ずかしいことこの上ない.あの頃は脊髄反射でしゃべっていた頃で、なんにも考えずにただ毎日友達としゃべるのが楽しくて楽しくて仕方なかった.科学部なんてのが高校にもあったはずなんやけど、そんなものには目もくれず、ただ毎日帰宅部に所属して楽しんでいた.それで受験に突入した.受験という観点から数学にハマっていった自分があるけれども、なかなか主体的ではなかった自分という高校生の「常識」に照らし合わせると、この展覧会に出展している高校生のレベルには感服してしまった.
自分の講演では、いみじくも「科学者になるためのコツ」についても含んだ講演を依頼されていたわけだが、このポスター展示を講演前に観て、「ふーむ、はて僕に何か言えることがあるんやろか?」の疑問符が頭にこびりついた.で、少しだけ会場を離れて冷静になってみようとしたわけだが、結局は、どんな講演でも講演前は開き直るしか無いわけで、今回も開き直るべしとの結論.自分の高校時代大学一年生時代をあるがままに披露して、今までの人生をそのまま伝える、それが一番彼らにとって一緒に感じられることだろうと信じて、そのような話をすることにした.
結果、どのように彼らが思ったかは知る由は無い.しかし、彼らの科学者への熱いまなざしを僕は忘れることが出来ない.